「汐美学園を、もっともっと楽しくしませんか?」 何か悪いものでも食べたのか、彼女──白崎つぐみは言った。 前振りがあったわけでもない。それ以前に、彼女と知り合いだったわけでもない。 唐突に、白崎は言ったのだ。 「そういう話なら、生徒会に掛け合った方がいいと思うけど」 と、喉まで出かかった言葉を腹の底まで押し戻したのは、俺──筧京太郎の悪癖だった。 情に棹させば流される、とは有名な小説の一節だが、しばらく後の俺の心境はまさにそれだ。 川の果てまで流れ流され、河口付近を漂っていた俺の周囲には、同じように流された奴らが集っていた。 桜庭玉藻、 御園千莉、 鈴木佳奈、 高峰一景、 そして、なぜか通りがかる、小太刀凪。 最高の読書空間だった部室は、もはや昼休みの教室と変わらない有様だ。 「ええと、今日の活動ですが、カフェテリアの……」 聞き慣れた台詞を、白崎つぐみが口にする。 「あ、そういえば、カフェテリアの新メニュー食べました?」 「おっ、佳奈ちゃんも気になった? あの子、可愛いよね。俺、スレンダーな子が好みでさ」 「話を逸らすな。あと高峰、鈴木はウェイトレスの話なんてしてないし、お前の好みはどうでもいい。そもそも……」 「玉藻ちゃん、話題が余計に逸れて……。ほら、御園さんがこっちを怖い目で」 「睨んでます。なので筧先輩、ここで目の覚めるようなオチを一つお願いします」 「いや、オチとか関係ないし」 今日もまた、寄り道だらけの活動が始まる──
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